6秒間の軌跡を見て噛み締めること

映画ドラマ関連

高橋一生氏主演の土曜ナイトドラマ、「6秒間の軌跡ー花火師望月星太郎の憂鬱ー」を観ている。
特設サイトは、こちら。

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あらすじ

花火師の望月星太郎の、父が突然死してしまったが、何故か幽霊として星太郎の前に現れてしまう。
そこへ望月煙火店のチラシをみた水森ひかりが個人の花火制作を依頼してくる。花火を見た水森は、星太郎の店で住み込みで雇ってほしいと言いだしてー?

突然死した父親、いきなり来た女性との共同生活に戸惑う。そんな中で、父親や水森あかりに投げかけられる言葉によって星太郎は自分自身を見つめ直すきっかけができていく。

※ここから先は、私がドラマをみて感じた感想をかいております。ネタバレも満載ですので、未視聴の方で、ネタバレを知りたくない方は、ここでお引き取りください。

徒然と思うこと

始めに、ひかりが作ってもらった花火をみて鼻で笑ってしまう場面があるが、それをみて星太郎は、自分が侮辱されているのかと思ってしまう。誰だって鼻で笑われたら馬鹿にされていると取るだろう。

しかし、ひかりが笑った理由は、複雑で過去の軋轢が入り混じって出た笑いだと思った。
人は、感情がぐちゃぐちゃになって混乱したり、精神的余裕が無かったりすると笑ってその精神を保とうとするところがあると思う。

水森ひかりも、その一人であり、過去の出来事が走馬灯のように頭を駆け巡り、思わず鼻でわらってしまったのだろうと考える。

鼻で笑う、怒っている…。其処には実は、複雑な感情があったのだ。という当たり前だけどなかなか気付けない人間の複雑な感情を教えてくれるドラマだなあというのが、第一印象であった。

変化を恐れる星太郎

星太郎は、何かといろいろとやらない理由をつける。そのままでいる理由をつける。
花火の上げ方も、まわりの花火師がパソコンを使って打ちあげているのにいつまで経っても手上げに拘ったし、元恋人との結婚も先送りにして、結局振られてしまう。とにかく変化が嫌でたまらない。

みんな身に覚えがあるのでは?
理由をつけてるうちは、本当は、やりたくないし、変わりたくない。
やりたいなら変わりたいならもうやってる。

変化を恐れていたり、何かに挑戦することを怖がっているなら、ビビってるなら恐いんだよねとか、憂鬱ならそうだと正直に言ったほうがまだ良い。アレコレと言い訳をいうから余計にカッコ悪いし、駄目なんだと自戒も込めて言いたい。

父親に執着する星太郎?

時々出てくる父親の幽霊と、くだらない話を延々とする日々に、なんだかんだ言って幸せを感じる星太郎。

くだらない話ができる相手って、貴重だよね〜…それが親でも友人知人でも。
その時が一番幸せなのかもしれない。みんな当たり前過ぎて気が付いてない。
その存在を、亡くしたら気付くんだけど。

そんな父親が好きだった芋けんぴとか干し柿ばっかり食べてたら、それを食べるのが当たり前みたいになってる星太郎。「他のお菓子って食べないんですか?」と、ひかりに突っ込まれても「俺が食いたいから食ってるんだ」と言い張る。

星太郎は、外の世界を知らなさすぎると思った。

外界を知らないと物の見方も保守的になって周りが見えなくなって視野が狭くなる。固定観念に囚われてしまって、柔軟ではなくなる。なので、ちょっと危険だと感じた。いや、かなり危険だろうと思う。

星太郎は、変化を恐れすぎて既に失っているものが多々ある。恋人、母親…そして父親も。

父親は、亡くなったのであるが、水森あかりの「お父さんって本当に幽霊なんですか?」という一言で、ハッとしたが、星太郎に見えてるのは父の幽霊じゃなくて星太郎の願望なのではないか?
実際そうだったと第7話で明かされたが。

棄てられなかった父が取っていた新聞、父の好物のお菓子をいつまでも食べる。父の一言で花火の打ち上げ方さえも変えてしまった…。これだけ父親に執着していたら不思議ではない。

水森ひかりが、投げかける言葉で、星太郎も少しづつ気付きを得て変わっていっているように思う。
彼女に、彼の執着や固定観念を解き放つ手助けが出来るか。
ひかりは、自然と星太郎のカウンセラーのような存在になっていっているが、これがカウンセラーだろうが、友人知人家族だろうが、本人に代わって本人を変えたり、救ってやることなど出来ない

周りが幾ら言葉をかけても、本人が気付いて自分で答えを出さなければ根本的なことは何も変わらないし、解決しないと考える。その人の感情は、その本人のものであるからだ。

星太郎が保守的になった理由

母親が離婚して、家を出る時に、「9歳男児が、まだおっぱい飲んでんのかって言われたら親父と暮らすって言うわ」と宣った星太郎だが、私は、そんなもんその町出ていけば言われないじゃん。笑う奴らには、笑わせておけ。と思った。

本当は、お母さんと暮らしたかったのに、また色々理由を付けて自分の心に蓋をする星太郎。

母親の話を避けてたのは、親父に気を使っていたのではなくて、自分がそういう自分の気持ちに向き合いたくなかったのでは?

しかしながら…星太郎がここまで保守的になるのは、星太郎の周りの人間がそうだからであって、環境もかなり悪いなあと感じた。

星太郎は、母親に棄てられた可哀想な子に違いない」という思いこみや「子供は、父親の跡を継ぐものだ。だから父親と暮らした方がいい」という押しつけ。
いつまでも母親に甘えたり、執着しないでほしいという勝手な願望。
そういう気持ちから出た言葉が「まだおっぱい飲んでるのか」なのだろう。
田舎の嫌なところあるあるではあると思う。

父と母の不倫について

星太郎の両親は、離婚してまた一緒になって不倫してしまっていたわけだが…二人ともその事実については、息子に悪びれもせずにいる。なんとまあ身勝手なことだと思うが、星太郎の母親も自分が航の元にいるより今の生活の方が活き活きとしていられるなら、それが答えだし、それがあったから二人は、また男と女として出逢い直せたのかもしれない。

繰り返すが、これは息子の気持ちを全く無視していることである。
親も人の子であり、そこは、やはり己の感情を優先させてしまったのかなあという感想だ。
しかし、二人が、星太郎に全く悪いとは思っていないわけではないと思った。

言いたいことがあるなら聞くと言った星太郎の母。多分、息子に罵倒されても、なんなら殴られる覚悟もあってそう言ったのではないかと思う。息子は、元夫とのことをどこまで知っているのかわからないし、30年の時を埋めるには、一口では分かり合えないと思ったからだろう。


息子に隠しきれなかったことだけは、謝るという父。そこは、ギリギリ守っていたかった境界線なのだろう。これだけは、墓まで持っていくと心に決めていたはずだ。世の中には、知らなくてもいいことがある。真実だけが、人を幸せにするのではないからだ。

でもそれもこれも両親の身勝手さの上の話である。私自身は、不倫など肯定したくはないが、人間とは、身勝手な生き物であると思う。親もそこまで立派でもない。人なのだから。

星太郎と父親とひかりのこれから

ひかりのおかげで、星太郎も痛いところを突かれつつ、己を取り戻していった。
でも、ひかりも彼に何かを与えるばかりではなく、星太郎と触れ合う中で、自分の気持ちの整理をつけていったのではないだろうか。
親も彼氏も捨てて星太郎の元に来たつもりが、結局その呪縛から抜け出せていていないように見受けられる。星太郎に自分が言って欲しかったことを要求してしまうのもそうだろう。
でも、それは他人に言わせるのではなく、自分に辛かったね、しんどかったね。と言ってあげることではないだろうか。
言って欲しかったことを言ってくれなかったとキレるのも身勝手だし。まあ、星太郎も他人の気持ちが汲めなさすぎではあるが(汗)

これから、望月煙火店の人々は、どうなっていくのか。
多分、これからもこんなふうに、グダグダと過ごして、でも、少しずつでも変わっていけるのではないだろうか。そして父親が消えても、たとえ、ひかりが星太郎の元を去っていったとしても、彼は、もう一人でも十分生きていけるだろう。

一人で生きてゆく決心、己と向き合う覚悟。生きてゆく上で、ものすごく大切な事なのである。
それを改めて気づかせてくれたドラマだったと思う。本当に、ありがとう。

続編

6秒間の軌跡ー花火師望月星太郎の憂鬱ーには、続編があります。
望月煙火店に新たな従業員が来るようですよ?
特設サイトでは、過去作品も一挙放送されるサイトも紹介されています。
気になる方は、こちらの公式webサイトまでどうぞ!

6秒間の軌跡ー花火師望月星太郎の2番目の憂鬱ー

続編の感想を書いたので、お時間とご興味があればどうぞ!

こちらは、本作のサウンドトラックです。
左が最初の作品、右が2のサウンドトラックです。宜しければご覧ください。


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