E氏との話

ビンテージコラージュ 月と自転車 恐い話まとめ
月と自転車

※これは、ホラーの短編小説です。
グロテスクな表現がありますので、苦手な方は、ここでお帰りくださいませ。

気が付いたら此処に居た。
一体ここは、何処だ?

起き上がって、周りを見渡すと何もない土の上に座っていた。
そばには、大きな1本の石碑が立っていた。よく見ると、何か刻まれている。

「これは、○○年に、2人を偲んで建立されたものである」

と書かれている。これは、もう何百年も前の事じゃないか。誰かの墓なのか?
と、その石碑を繁々とみていると、石碑の周りに何か落ちている事に気が付いた。

ボロボロの絨毯、八つ裂きにされている人形、壊れている自転車、石碑の先っぽ。
それらが、石碑をぐるりと囲むようにしてバラバラに落ちていた。

これは、一体何だ!?

何だか、とても大切なことを忘れているような…?それが何なのか思い出せない。
ふらふらとしながら、地面に落ちている八つ裂きにされている人形の腕を掴んで拾ってみた。
人形は、長い髪をした女性が赤いドレスを身に纏っていて、肌の色は白く目は深い緑色で、唇には赤い口紅のような塗料が塗られている。汚れてはいるが、元は、上品で高級品だったことがわかるような代物だった。その人形の腕は、だらんとしていて今にも千切れそうである。

しばらく、その人形の腕を掴んで見つめていた。

すると、

目の前が、ザーーーーっザーーーーーっと砂嵐のようになって見えなくなった。

な、何だ!?と思って思わず目を擦ると、目の前から急に馬車が現れて俺は、3メートルくらい吹っ飛ばされて転がった。馬車に轢かれてしまったのだ。

ううッと、腹を押さえて苦し悶えると、何だか様子がおかしい。
痛いなんてもんじゃなくて、腹に激痛が走って何かが腹の中で、潰れてしまっている感覚だった。
腹を押さえている腕に、ドクドクと血が溢れてくるのを感じた。

そのまま、バッタリと倒れると馬車からコートを着た男が現れて駆け寄ってきた。
俺をサッと抱き起こして、何か叫んでいるが全く聞こえなかった。

そのまま、俺は気を失った。

しばらくして、また目が覚めると、石碑が立っている地面に戻っていた。
慌てて腹を触って怪我の程度を確認したが、何もなっていなかった。
出血していた痕跡すらない。どういうことだ??と困惑して周りを見渡した。

よく見ると、あの八つ裂きにされていた人形が無くなっていた。
石碑の周りには、壊れた自転車、折れた石碑、ボロボロの絨毯が残されていた。
俺は、恐る恐る自転車に、そっと触れてみた。

自転車を起こすと、壊れてはいるが何とか乗れそうだった。
これに乗って、誰か探してみようと思った。自転車に跨って、漕ごうとすると自転車は、俺を乗せるやいなや、グンっ!と、何かに引きつけられるように、ひとりでに動いてスピードを上げて走り出した。

俺は、グウッと唸って自転車のハンドルを掴むので精一杯だった。自転車の走るスピードが速すぎて周りの景色が全く見えない。前から巨大な黒い壁が現れて其処へ思い切り衝突して自転車は、バラバラになった。俺は、壁に頭をぶつけて地面に叩きつけられて気を失ってしまった。

しばらくすると、また目が覚めて気がつくとあの自転車が無くなっていた。
残るは、ボロボロの絨毯と折れた石碑の先っぽだけになっていた。
この落ちているものに触れる度に、恐ろしいことが起きると思うと身震いがした。
しかし、周りから白い霧のようなものが、色濃く立ち込めてきてひどく寒かった。
恐怖で、しばらく蹲って肩を摩りながら耐えていたが、耐えきれずに思わず落ちていたボロボロの絨毯を手に取って、身体に掛けてみた。

すると、絨毯はズッシリと重くなって俺にのしかかってきて、急に大きく広がった。
ううーー〜〜!重い!
絨毯は、どんどん広がっていって俺の身体を完全に包み込んでしまった。
分厚い絨毯が、のっしりと覆い被さってきて身体は、圧迫されてだんだんと息ができなくなってしまい、目の前がチカチカとして気を失ってしまった。

しばらくすると、また目が覚めて気がつくと大きな石碑の前に倒れていた。

よく見ると、何か彫られている。

○○年に、○○を偲んで建立されたものである

と書かれてある。

○○!?これは、俺の名前じゃあないか!
いや、俺はまだ生きている!何をふざけた事を!と思いかけて、ふ。と思考が止まった。

この石碑、どこかで見たよな?

先っぽが折れている石碑の周りに、壊れた自転車、八つ裂きにされた人形、折れた石碑の先っぽ、ボロボロになった絨毯…それらのことを思い出した。その折れていた石碑とそっくりのものが目の前に立っているではないか。

しかし、刻まれている文句は違う文面だし、石碑を見上げると、先が折れていなくて綺麗な状態に戻っていた。まるで、建てられたばかりのように、ピカピカとしていた。

これって……?

E氏との話。完

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