「それは?」神木が固唾の飲んで尋ねた。
「うん、その差配する偉い人に、お金の正体が何なのか口止めされてんのよ。下界の人間に知られちゃまずいことなんじゃない?いいことが起きる方法を知られるってことは、それを逆手に取って悪用も出来ちゃうってことなんじゃないかしら?」美栄子は、手に万年筆を持ってそれを振りながら言った。
「なるほど!それだと母が曖昧な表現しか出来なかったのかもしれませんね。」
「と、なるとお母様からお金のことを聞き出すのは、ちょっと難しいわねえ。」
神木は、はあ。と溜息をついて目を落とした。
「何かの文献に載ってませんかね?」
「お金のこと?そんなのないんじゃない?そもそも古事記とか宗教だって所詮、人間が勝手に作ったもんだからね。別にそれが真実じゃないのよ?宗教だって創始者の思考を歪曲して自分らの都合の良いように解釈して広めてんだからさ」
「た、確かに」
占い師の美栄子に、ここまであっけらかんと言われると若干引いてしまう神木であった。
「あなたのお母様から禁忌を冒してまで無理やり聞き出すのも気がひけるわねえ。そうだ!他の誰かに聞けないかしら?」
「他の誰か?」神木が頭を上げてみると
「他の幽霊とか!」美栄子が目を爛々とさせた。
「ええ…?それ、どうやって交信するんですか?美栄子さん、霊媒師じゃないでしょ?」
「まあ、そうだけど…」
「占いの力で何とかなりませんか?」
「ええ?私は占いは出来るけど、誰かと交信するってのはねえ。んんーやるとすればチャネリングとかかなあ?その人の前世の姿とかをみるわけ。」
「えっ!?それって、僕の前世とかも見えたりします!?」
「まあ、ある程度はね。」
「其処から何か解決の糸口掴めませんかね?生まれ変わってるって事ですよね?じゃあ、死んでから生まれ変わるまでの記憶があれば、其処を思い出せばお金が何なのかわかるんじゃないですか?!」
「あー…確かにね。」美栄子の顔が曇った。
「?」神木がキョトンとして美栄子を見つめた。
「あのね、確かにそうなんだけど、難しいかも」
「どうして?」神木は、思わずタメ口で聞いてしまった。
「前世は、見えるけど神木くんの言ってる間の記憶は、覚えていないことの方が多いのよ。実際に神木くんも前世のこと覚えてないでしょ?仮に覚えてても断片的なことだけだしね。生まれる前に、どこで生まれるか、どんな人生を送るか、いつ死ぬかまで教えてくれるらしいんだけど、生まれてくる時に全部忘れちゃうのよ。」
「ええ?何でですか?」
「産まれてくるのが苦しすぎて忘れちゃうらしいの」
「ええーーー?そうなんですか?」
「産まれてくる前のことを覚えている人も、ほんの一握りだからね。」
「あーそうなんですね。難しいなあ」
「私も前世までは遡れるけど流石に、生まれ変わるまでの期間のことまでは見えないね。見えないのも、もしかしたら規制が掛かっているのかもしれない」
「天からの?」
「そう考えるのが自然かな」
「そ、そんな…」神木がガッカリと項垂れた。
「神木くんさ、何でそんなにお金のこと知りたいの?」
「んん…なんでですかね?何となく凄く大事なことのような気がするんです。この先、自分を左右するかもしれないものが隠れている気がして。」
「運命とか?」
「んー…わかんないですけど、何となく」
「確かに、お金が徳なんだったら、大事なことかもね。」
生命の沙汰5へ続く。
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